小売業は、その国の生活を映す鏡のような存在であるが、世界のショッピングセンターや小売店の実情から、生活全般の変化を考える。
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恩師、川進一に学んだ商売の真髄
米国で食事を共にする

 今年は、私が師と仰ぐ川進一先生の生誕100周年に当たります。雑誌『商業界』でも特集を掲載していましたが、川先生は、新潟大学の教授、東洋大学の教授、そして晩年は東洋大学名誉教授として日本の商業経営を学問的に位置づけた人でした。それまで商人の精神についての言及やシステム、経営の話はありましたが、それを理論づけ、学問的なレベルに押し上げることに貢献された人です。実際、RMS(リテイル・マネジメント・スクール)という商人のための学校を創設したり、米国流通業の視察を行って、多くの商業者を指導・教育されました。

 数々の活動をご一緒にしてきた私も個人的に多くのことを教えて頂きました。なかでも特に重大なことは商売の真髄を学んだことでした。商売にとって特に大事なことが2つあります。一つは、お客の信頼を得るということです。お客の信頼が得られない商売は、一時的に受けても直ぐに駄目になってしまいます。もう一つは、継続させることです。先述のことでもそうですが、ブームに乗って一時的に流行ってもブームと共に消滅してしまったのでは、本当の商売とは言えないのです。「一心不怠、成長無限」は、先生の座右の銘ですが、継続こそ無限の成長の基なのです。

 商売には、必要な計数がたくさんあります。なかでも特に重要な計数は、売上高=客数×客単価というものです。もっとも単純で、当たり前の計数なのですが、実は、ここに前述の商売の真髄が隠されているのです。「売上高=客数×客単価」の客数を分解すると、「来店客数×来店頻度」となります。つまり、何人のお客が何回来店してくれるか、ということです。換言すれば、度々来店してくださるお客を何人確保しているかが重要だということです。さらに、客単価を分解すると「一品単価×買上げ点数」となります。つまり、お客に買上げて頂く商品の金額を大きくするには、高いものを売るのではなく、買上げてもらう商品の数を多くすることの方が大事だということです。いずれにしても、お客の信頼が欠かせませんし、継続した商売でなければ何の意味もありません。

 川先生は、この計数を次のようなエピソードで分りやすく説明されました。それは先生がお若い頃、アメリカのシカゴで実際に体験したという話です。店舗視察でアメリカ各地を2週間歩き回って最後にシカゴに寄るのですが、その時にはお金が底をつき始めていたということです。そこでシカゴでは、宿泊費を節約し三流ホテルに泊まります。ところが、そのホテルの入口前には「GIVE ME 10CENT」、つまり10セント下さいという札を首から吊るした老人が立っていたのです。一流ホテルであれば、ホテルのドア・マンが、その手の人間を排除してくれるのですが、安ホテルだったためにこの話が生まれることになるのです。

 その時、先生のポケットには25セント硬貨しかありませんでした。ちょっと勿体ないと思ったものの、しかたなく与えてすぐ立ち去ろうとしました。ところが驚いたことに「旦那、ちょっと待ってください」といって老人が呼び止め、15セントのお釣りをくれたということです。欲しいのは10セントだけで、それ以上は受け取らないという老人の心意気だったのでしょう。先生は感心して、次の日も、その次の日も10セントを出し、ついに最後の日まで10セントを与えました。10セントだったので抵抗無く寄付ができたのです。結局、6日間の滞在で60セントを寄付することになりました。最初は、25セントを寄付してそれでお仕舞い、と考えたものが合計60セントも払ったことになったのです。

「私は、お釣りをもらったときからどうやら相手を信じてしまったようだ」、「私の10セントで相手は毎日小さな幸福感をおぼえていたかもしれないし、彼は、私に10セントを異国の人に与えるというちょっと恵まれた生活の喜び感を与えてくれた」と先生は、この時のことを述懐しておられました。このエピソードは、冒頭の計数と同様に、信頼と継続こそが、商売の真髄であることを教えているのです。川進一先生の生誕100周年に当たって改めてこのことを確認しておきたいと思うのです。
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