小売業は、その国の生活を映す鏡のような存在であるが、世界のショッピングセンターや小売店の実情から、生活全般の変化を考える。
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PBでの低価格競争が過熱
PBPBイオン

 プライベートブランド(PB)が注目されています。PBとは、卸、小売などの商業者が消費者の立場から欠落していると思われる商品を開発し、販売するものです。商業者が、商品の仕様の決定、品質管理、物流、商品ラベル、包装、デザインなどの企画・販売の責任を負うことになります。PBが今、注目される理由は、景気の急激な悪化、収入減退で、廉価な商品に関心が集まっているためです。

 PBは、アメリカで誕生しました。広い国土で、早くから小売資本が発達したアメリカでは、小売業が成長・発展して行くためには、責任を持って販売できる商品を自ら作る必要があったのです。裏を返せば、それだけいい加減な商品が多かったと言うことです。加工食品では、いい加減な原料が使われたり、衛生管理が悪かったり、時計やラジオなどの機械ものはすぐに壊れてしまうなど、詐欺まがいの商品が多かったのです。ビジネスを成功させるには、消費者の信頼を勝ち取らなければならないのです。

 最初のPBの成功は、当時急速に成長していた2つの企業で見られます。換言すれば、急速な成長はPBの開発なしには不可能だったのです。2つの企業とは、A&Pとシアーズ・ローバックです。A&Pは、アメリカ全土にお茶を販売していた小売店です。お茶は、当時中国やインド、セイロン(現在スリランカ)などから輸入されていましたが、欠陥商品もたくさんありました。そこでA&Pは、一定の基準を充たした商品に自社のブランドを付けて、品質の保証をしました。これによって、消費者は安心して買物ができるようになったのです。広大なアメリカの国土で成長していくためには、消費者の信頼がどうしても必要だったのです。A&Pは、後に全米ナンバー・ワンの食料品店になりますが、PBで培った信用が大きかったと言えます。

 シアーズ・ローバックは、通信販売から店舗販売に移行した企業です。日本のジャスコやイトーヨーカドーのようなGMS(ゼネラル・マーチャンダイジング・ストア)といわれる店舗を展開しながら、1991年にウォルマートに抜かれるまで売上高全米ナンバー・ワンを誇っていました。通信販売は、当初トラブルの多いビジネスでした。実際に商品を見て買うと言うものではないので、詐欺まがいの欠陥商品が多かったのです。そこで1912年シアーズは、自社内に商品試験室を発足させました。小売企業では初めてのことです。前年の1911年には有名なT型フォードの生産開始があったり、前述のA&Pがチェーンストア組織に政策転換したり、この時期はアメリカの経済・社会に新しい波が起きていたのです。

 シアーズが商品試験室を設けたのは、品質の保証をして、お客に安心して買物してもらうためです。それ故、最初は試験をいやがっていたメーカーもシアーズとの取引を喜んでするようになりました。シアーズの商品試験室を通過することは、お墨付きを頂いたことになり、お客の信頼を勝ち得ることになったのです。実際、取引によって大メーカーとなった企業も少なくありません。その商品の一つにタイヤメーカーがあります。今では、誰でもが知っているグッドイヤーは、シアーズとの取引で大きくなったメーカーの一つでした。

 ところがグッドイヤーは、1930年代半ばにシアーズとの取引で公正取引委員会から告発を受けます。他の小売業と比較して、あまりにもシアーズを優遇していたからです。しかたなくシアーズは、タイヤの仕入れ先を替えます。大規模メーカーから中小メーカーに替えざるを得なくなるのですが、そのときシアーズは、これまで扱っていたものと同等の品質のものにするために、仕様書による発注をします。仕様書発注とは、使用する材料や形態、加工工程、加工法などを指定したものです。シアーズでは、これを切っ掛けとして中小企業の組織化、PBづくりを活発にします。

 現在、アメリカのスーパーマーケットで売上高一番のクローガーもやはりPBを武器に成長した企業でした。今では売上高の24%がPBで占められていますが、これもスーパーマーケットのナンバー・ワンです。クローガーがシンシナーティで誕生したのは、1883年のことです。そのとき卸を排除し、メーカーとの直接取引に取り組んだことと自家製のパンの導入によって評判を得ました。このパンの自家製とメーカーとの取り組みが、その後のPB開発に繋がっているのです。

 日本でのPBパイオニアは、ダイエーでした。ダイエーは、あらゆる面で日本の流通をリードしてきましたが、PBに付いても先頭を切って取り組みました。初期の代表的商品としては、60年の女性用ストッキング、62年のカッターシャツ、食品の粉末ジュース、マーガリン、家電でもブブといったものがあります。こうしたPBを武器に一流ブランド品を必ず安く売る、というのがダイエーのコンセプトでした。こうした動きに70年代になると逆にメーカーが寄り添ってきました。メーカーとダイエーとのダブル・チョップ商品が作られたのです。

 現在、日本でもっともPBに力を入れ、販売高が大きいのがイオンです。イオンのPBの売上高は、2007年で2647億円、2009年2月の見込みでは、約3700億円、2011年2月期には7500億円にする計画です。代表的なPBはトップバリューと言います。次に販売高の大きいPBは、セブン&アイの展開するセブン・プレミアムです。イオンには出遅れていますが、グループの百貨店にまで扱いを拡げて2010年2月までに3200億円を計画しています。3番目に大きいのが西友の展開するグレートバリューです。ウォルマートの傘下にある西友は、2011年には1000億円を目指しています。

 イオン、セブン&アイ、西友のトップ・スリーに対抗して、ユニー、イズミヤ、フジの3社が共通のプライベート・ブランドの開発を発表しました。ユニーは、名古屋を拠点に中部を地盤とし、イズミヤは大阪を拠点に関西を地盤とし、フジは高松を拠点に四国を地盤としています。地盤が重なっていないということが、PB開発の大きなメリットなのです。今年(09年)の9月から食品90品目、日用品雑貨10品目の合計100品目を順次開発し、3社合わせて約400店で販売していくとしています。各社は、以前からPBを持っていますが、各社の展開はそのままとして、共通PBを開発することにしています。

 PBは、廉価のものだけではありません。アメリカでは廉価なエコノミー・ブランドとは別にプレミアム・ブランドといって、高品質を追求したPBがあります。PBは消費者の視点から、欠落している商品ということですから、エコノミーPBの場合は、トレード・オフ、つまり、ナショナル・ブランドで消費者に必要がない、あるいは用途を限定すれば必要なくなると思われる機能を除去することになります。例えば、お年寄り用の単機能の携帯電話などはその例でしょう。プレミアム・ブランドは、逆に必要だと思われる機能を付け加えます。例えば、自然食品などはその例に挙げることができるでしょう。値段は高くなっても消費者ニーズのあるものです。

 日本の企業でも以前から複数のPBを持っています。イオンは、低価格PB「ベストプライス」から高品質PB「セレクト」まで7つのPBを持っています。「ベストプライス」は、09年8月末までに新たに500品目を投入し、「セレクト」は、価格を下げて販売増を狙います。ユニーは、これまで4つのPBを展開してきましたが、3つに整理、統合する、ということです。低価格は「イープライス」と言い、高品質は「カチアル」です。「カチアル」は、4月初旬にみそ汁、ウインナー、トイレットペーパーなど60品目発売されることになっています。エコノミーPBは、製造量が問題です。一定の量がなければ、製造は難しいのです。トップ3に対抗して、3社協力のPBが生まれるのもそこに理由があります。景気の急激な悪化、収入の低下によって注目を集めるPBですが、これを切っ掛けに研究が進めばいいと思っています。
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テーマ:ビジネス - ジャンル:ビジネス

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2009/05/15(金) 01:12:13 | URL | hikaku #cJuqLt0I[ 編集]
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2009/05/24(日) 16:26:15 | | #[ 編集]
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