小売業は、その国の生活を映す鏡のような存在であるが、世界のショッピングセンターや小売店の実情から、生活全般の変化を考える。
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セブン-イレブンのロイヤルティ問題の矛盾
セブンイレブン
タスポ効果や自宅で食事をする人の増加などのお陰で流通業のなかでも好調な業績を続けていたコンビニエンス・ストア(以下コンビニ)に新たな難問が持ち上がっています。公正取引委員会が独占禁止法違反(不公平な取引)容疑でセブン-イレブン・ジャパンの調査に乗り出したというのです。容疑の内容は、加盟店の値引き販売を優越的地位の利用で、不当に制限している疑いがあるというものです。もちろん、この問題はセブン-イレブン1社だけに留まりません。ほとんどのコンビニが同じシステムということを考えれば、セブン-イレブンはその代表として名が上がったものと思われます。

 フランチャイザーという本部とフランチャイジーという一つ一つの加盟店が、契約で繋がっているフランチャイズ・システムではこの問題は、以前からくすぶっていました。それが今回大きな問題になったのは、急激な景気の後退と消費の不振が背景と思われます。さらに廃棄物を大量に出すと言われるコンビニは、「もったいない」ビジネス、という感情がそれに輪を掛けたこともあるでしょう。しかし、この問題の最大のポイントは、小売業の永遠の課題でもある売れ残りロス(損失)にある、といえます。

 売れ残りロスとは、通常価格で販売して売れ残ってしまった商品のことです。売れ残りは、利益を縮小し、経営を圧迫します。たくさん売れたと思っても、売れ残りが多いため、最終的に利益が出てこないと言うことがよくあります。鮮度が重要な商品は、このロスさえ撲滅できれば、利益は確実に保証される、といっても過言ではありません。いかにロスを減らすかは、コンビニに限らず全ての小売業の課題であり、売れ残りロスを削減するための手法は、古くからさまざま考えられてきました。見切って売るというのもその一つです。見切って売るとは、値段を下げて売り切る手法です。

 ボストンにあるファイリーンというデパートメントストアが、オートマチック・バーゲン・ベースメントという有名な売場を作ったのは、1909年のことでした。地階売場の商品が12日間定価で売れなかった場合、自動的に25%値下げし、それでも売れない商品は、18日以降さらに25%値下げし、それでも売れない場合は、25日以降25%下げ、最終的には、慈善事業に寄付して処分するというものです。この手法が、全米のあらゆる業態に波及し、今日の見切りの手法となっているのです。見切って、すべて処分するという手法は、昔から行われているものなのです。

 ところがセブン-イレブンは、別の手法を考えました。元々のロスを撲滅すれば、見切って売る必要はないと考えたのです。そこで、「単品管理」の徹底が行われました。毎日、一つ一つの商品について何個売れたかを確かめ、目立って動きの遅いものは別の商品に替えられました。35~50坪ほどの狭い売場面積で売上を上げるにはたくさんの商品を並べる必要があるし、売れないものを置いておく余裕はないのです。そのために、商品の補充回数を多くして品切れや売れ残りを防いだのです。売れ残りロスの撲滅は、まさにこの狭さと商品種類の多さの矛盾を克服することになり、その上鮮度を保持することにもなるのです。コンビニのシステムでは、賞味期限切れの商品が置かれるなどと言った問題は起こりようが無いのです。

  コンビニでは、ロスを減らすためにさまざまな技術を開発してきました。しかし、それでも売れ残りロスが出てきます。店側は、本部から提供される前年の同日・同時間のデータ、曜日の調整、記念日、地域の行事、温度、天候などたくさんの情報を参考に売上を予測し、本部に発注し、商品を補充します。次に商品が入ってくるまで欠品が無く、残品が少なければ適正な発注ということになりますが、往々にして店側の予測は外れます。天候の急変で、弁当やおにぎり、パンが大量に売れ残ってしまった、ということはよくあることです。そのとき、商品は一定の時間で処分しなければなりません。

  コンビニは、フランチャイズ契約に基づいて本部へロイヤルティ(セブン-イレブンではチャージと呼ぶ)を支払います。コンビニのロイヤルティは、ほとんどが「粗利益方式」と言われるものです。粗利益方式とは、売上高から売上原価を差し引いた売上総利益(粗利益)から、決められた割合のロイヤルティを本部に支払うというものです。セブン-イレブンのロイヤルティの割合は、契約内容によって現在45~70%程度となっています。ところが、ロイヤルティを差し引いたものが直ぐに加盟店利益とはなりません。売れ残りロスが加盟店側の費用とされ、差し引かれるからです。計算方式は以下のようになります。
●売上高-売上原価=粗利益-本部ロイヤルティ=加盟店収益-加盟店費用=加盟店利益
今回の問題はまさにここにあるのです。

 加盟店側は、できるだけ処分する商品を少なくしたい、と考えます。見切って売れればそれだけ店の損失を減らし、利益が増えるからです。一方、本部側からすれば売れ残りロスを本部が持てば発注がルーズになって、コンビニの特徴である、狭い売場面積のなかで高い売上を実現することも、鮮度を維持することも不可能になってしまうかも知れないのです。他の小売業と何ら変わらないものになって、これまで積み上げてきた技術や物流体制が、すべて崩れてしまうことになりかねないのです。そこには全体のシステムと個々の店との矛盾があるのです。

 いかにセブン-イレブンのシステムが優れたものになっても、鈴木敏文セブン&アイ会長が語ったように「発注は、最終的には人の判断で行うもの」という限り、経営にロスは付きものになります。その場合、問題はリスクに対する意識を加盟店がどれだけ意識するかということです。もし、ロスを本部が持つとすると加盟店側は、売れ残ってもどうせ本部が持ってくれるから、と予測が甘くなってしまう。加盟店にとって売れ残りより欠品を防ぐ方がいいからです。これは、売れ残った商品を自由に返品していた企業の衰退の歴史が示しているところです。加盟店が緊張感を持って発注をし、失敗があれば、素直に反省して次の発注に生かす、これが本部の望んでいるところなのです。

 セブン-イレブンのシステムが精度を増せば増すほど加盟店にとっては、残品ロスは不可抗力と感じることでしょう。もちろん、なかには本部のデータや指導などシステムを無視して発注する加盟店もあるでしょう。しかし、そんな不届きな加盟店は、僅かであろうし、ほとんどはシステムを理解しているはずです。セブン-イレブンのシステムがこれだけ進歩したことを考慮すれば、不可抗力の発注ミスについては本部がロスを引き受けることを考えても良いのではないかと思うのですが、どうでしょうか。
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