小売業は、その国の生活を映す鏡のような存在であるが、世界のショッピングセンターや小売店の実情から、生活全般の変化を考える。
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ダラー・ジェネラルのTOBで混迷深めるVS業界
 前回の続報です。前回、業界第3位のダラー・ツリーが2位のファミリー・ダラーの買収を発表したと書きました。ところが、横やりか入ったのです。第1位のダラー・ジェネラルが動いたのです。ダラー・ツリーとファミリー・ダラーは、両社とも役員が了解済みということで、買収話はスムースに進むと思われたのですが、ダラー・ジェネラルはダラー・ツリーを上回る条件を提示して、ファミリー・ダラーに待ったをかけたのです。業界トップを長く維持してきたダラー・ジェネラルにとって、トップを奪われることが、どうしても許せなかったのでしょう。

 ダラー・ツリーとファミリー・ダラーの合意が第1幕とするとダラー・ジェネラルの提案は第2幕です。ダラー・ジェネラルは、7月28日ダラー・ツリーがファミリー・ダラーに提示した1株74ドル50を約5%上回る1株に付き78㌦50の値を付けました。この買収が実現すると、買収に要する総額は、ダラー・ツリーよりも12億㌦も多い97億㌦になります。さらに、46州に約2万店、売上にして280億㌦を越す企業が生まれることになります。残されることになるダラー・ツリーが4,812店、売上高が約77億㌦ですから、このVS業界では圧倒的に大きな企業が生まれることになります。

 以前、2015年には引退すると表明していたダラー・ジェネラルの会長兼CEO、リック・ドレイリング氏は、事実上引退を撤回し、このファミリー・ダラーへの提案が株主や会社にとっていかに利益的かを熱く語っています。株主利益の第1は、ダラー・ジェネラルの付けた78㌦50は、ファミリー・ダラーが買収を提案する前日の株価60㌦66を29.4%も上回っていること。第2は、店舗のサイズや品ぞろえなどが似ているので、相乗効果が生まれ、3年間毎年5億5000万ドルから6億㌦の節約になるというのです。相乗効果は、品ぞろえの改善、店舗演出、効率的な仕入れや商品開発、物流や配送の的確化、さらに運営の効率化によって生まれてくると言うことです。圧倒的な企業が生まれることで、独占禁止法の問題が心配されますが、それに対しても700店舗を整理する計画だったということです。

 第3幕目は、この提案に対するファミリー・ダラーの対応です。ファミリー・ダラーは、ダラー・ジェネラルの提案に対して、独占禁止法の懸念を上げて拒否し、ダラー・ツリーとの合併を再確認するとしたのです。ファミリー・ダラーの会長兼CEOのハワード・リバイン氏は、ダラー・ジェネラルとの組み合わせは、外部のアドバイザーやコンサルタントの助けを得て今年の初めから取締役会で検討してきた、と述べています。その上でダラー・ジェネラルの提案は、総合的に判断して実現は不可能と全員一致で結論を出し、ダラー・ツリーとの合併を再確認した、とインタビューに答えています。さらに、ダラー・ジェネラルの提案には、独禁法に対して、見え透いた誇張が含まれていると指摘しています。

 第4幕は、ダラー・ジェネラルの最後の手段です。ファミリー・ダラーに対してTOB(株式公開買い付け)を引掛けたのです。TOBは、個々の株主から持ち株を買い取ると言うものですが、91億㌦(約1兆円)の資金を用意し、1株80㌦を現金で買い取ると表明しました。資金に付いては、すでにゴールドマンサックスやシティーグループといった投資会社にコンタクトを取っているということです。さらに独占禁止法の問題では、1500店の店舗を捨てる用意があり、ファミリー・ダラーに対しては損金として5億㌦を支払うとしています。こうなると死にもの狂いです。何としてもダラー・ツリーとファミリー・ダラーの合併を阻止しようという気持ちが伝わってきます。

 アメリカの小売業は、ウォルマートという巨大企業に席巻されています。直近の売上高(2013年度)を見ても、トップのウォルマートが約33兆円なのに対し、2位のスーパーマーケット、クローガーは約9兆円にしかすぎません。しかし、そのウォルマートにも天敵がいます。その一番手がこのダラー・ジェネラルをトップとするダラー軍団なのです。安さを売り物とするウォルマートを凌ぐ圧倒的な安さをお客に提供します。アメリカの経済は強さを取り戻しつつあると言われ、ドル高、円安が進行していますが、一方では貧富の格差が大きくなっています。究極の安さを提供するダラー・ストアが今後伸びていくことが予想されるのです。

 ダラー・ツリーとダラー・ジェネラルによるファミリー・ダラーの取り合いは、恋人を取り合う三角関係の様に見えます。しかし、これは単にVS業界の覇権争いということではなく、次の時代に向けて巨大なウォルマートへのチャレンジャーを決める戦いでもあるのです。ウォルマートに対抗するには、小さく分散していたのでは話になりません。1強他弱では、どこかの国の政治構造と同じ結果になってしまいます。対抗するための体制を整える必要があるのです。ファミリー・ダラーは、取締役会でダラー・ジェネラルのTOB提案を検討すると発表しましたが、決着を見るまではまだまだ時間が掛かりそうです。

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