小売業は、その国の生活を映す鏡のような存在であるが、世界のショッピングセンターや小売店の実情から、生活全般の変化を考える。
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ニトリのもう一つの強さ
千葉ニュータウン店


 千葉ニュータウンにオープンしたニトリを見てきました。ワンフロア(一層)の店舗でカーテン、寝具、台所用品、家具など2層で扱われていた商品が、そのまま収まっています。端から端までが広いので、2層の店舗より広く感じられますが、売場面積約5000㎡は、通常店舗より狭いくらいではないかと感じました。ニトリと言っても、10年ほど前までは、何屋なのか、なかなか理解されませんでした。今ではスエーデンのイケアの攻勢もあって、どんな店舗か、分かるようになってきました。

 ニトリは、ホームファニシング・フォーマット(業態類型)の店舗です。ホームファニシングとは、住まい空間に置いたり、掛けたり、吊るしたり、飾ったりして、快適で楽しいものにする商品のことです。そうした商品を扱っている店舗をホームファニシング・ストアといいます。しかし、ニトリの創業当初はカーテンや敷物の多い家具店といった位の認識しか持ってはもらえませんでした。そのニトリも今では、国内212店舗、海外5店舗(2010年2月末)の店舗を展開し、先頭を切って値下げを行い、高収益を上げている企業として注目を浴びるようになりました。

 ニトリの強さは、製造販売にあります。ユニクロなどと同じように自分で作ったものを販売するという仕組みを作っているのです。もちろん製造は、海外が中心です。ベトナムやバングラディシュなどで作って国内で販売するのです。その仕組みがあるから円高を武器に値段を下げることが可能なのです。しかし、やみくもに値段を下げているわけではありません。商品構成、品揃えのなかでどの商品の値段を下げて多く売るか。つまり大量に販売する商品を決めているのです。

 商品構成、品揃えには4つのパターンがあります。4つのパターンは、扱い商品の間口と奥行きの関係で決まります。間口とは、品種の多さであり、奥行きとは、その品種の中の品目の深さのことです。例えば、畑を耕すものというカテゴリーの中には、スコップや鍬や耕運機などの品種があります。そのスコップの中でも頭の形、サイズの大小、折りたたみ用などの品目があります。この品種を多くするか、品目を多くするか、また両方を多くするか、少なくするかによって間口と奥行きのパターンが決まってくるのです。

千葉ニュータウン店店内


 まず、第一のパターンが多品種少品目です。つまり扱っているのはスコップや鍬、耕運機の一品目だけ、というものです。アメリカには、バラエティ・ストアというフォーマットがありました。1950年をピークに衰退してしまいましたが、今でもダラー・ジェネラルとかファミリー・ダラーといった企業が残っています。日本の100円ショップなども同じパターンになります。つまり、品種的には何でもあるが、適切なものを探そうと思うと何にもないといった店です。昔、このフォーマットの代表としてウールワースと言う企業がありました。ウールワースへ行けば何でも間に合いました。例えば、荷物を入れる物が欲しいと思えば、紙製で組み立て式のトランクがありました。皮製やビニール製の物はまったく扱われていませんでした。あくまでも品種(機能)重視なのです。

 第二のパターンは、少品種多品目です。例えば、体を飾る物の中でも指輪やネックレスしか扱わないが、指輪ではダイヤを初めいろいろの石のものや婚約指輪、エンゲージ・リング、アンティークものなどさまざまな品目を扱うというものです。ショッピング・センターなどに出店している専門店はこのパターンです。日本でも帽子だけを扱う専門店、下着だけを扱う専門店などが出てきました。気に入ったものを見つけようと思ったら、こうした専門店がもっとも適しています。

 第三のパターンは、多品種多品目です。つまり、身体を飾るものを例にとると、品種においても品目においても十分に品揃えされているといったものです。専門店ほどには品目は多くないが、他の品種も同時に買えるので便利な店です。アメリカで言えば、ゼネラルマーチャンダイズ・ストアやディープディスカウント・ストアといったフォーマットに当たります。日本では総合スーパーや東急ハンズ、ジョイフル本田などがこのパターンになります。専門店の力がまだ十分強くないときには有効なフォーマットです。

 第四のパターンは、少品種少品目です。つまり、身体を飾るものは、指輪とネックレスとイヤリングだけで、それも僅かな品目しか品揃えされていない、といったものです。限られた用途のなかで、ある程度間に合えばいいという品揃えです。コンビニエンス・ストアはこのパターンの代表的なフォーマットになります。日常生活の中で取り敢えず間に合えばいいのです。アンティークショップやサンプル・ストア、キオスクなどもこのパターンです。在庫が少ない分、オープンは簡単ですがバックが強力でないと競争に弱いパターンです。

 このパターンにニトリを当てはめると第三であることが分ります。品種も品目も圧倒的に多いのです。注意して見るとユニクロも同じパターンということが分ります。豊富な品揃えで競争相手を圧倒しているのです。SPA,製造販売にばかり注目が集まりますが、強さはそれだけではないのです。単品の開発ばかりでなく、豊富な品揃えを実感させる商品構成、品揃えを実現することが必要ではないでしょうか。
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チェーンストア理論の生みの親、渥美俊一先生を悼む
若き日の渥美先生
 渥美俊一先生が7月21日永眠されました。心よりお悔やみ申し上げます。
渥美先生は、いわゆるチェーンストア理論を日本で構築された方でした。それまでの小売業経営の手法は、お客の信頼をどう獲得するか、が中心のテーマで経営理論と言ったものはありませんでした。先義後利、正札販売、現金販売などが商売の技術といえば技術でもありました。小売店自体も、百貨店に代表されるように地域主義、一点豪華主義、いわば王侯貴族を対象とするようなもので、一般大衆を排除したものでした。一般大衆にとっては、百貨店での買物は、夢だったのです。チェーンストア理論は、一般大衆が豊かな生活を享受できるための理論でした。

 実は、もともとチェーンストア理論なるものは無かったのです。アメリカのチェーンストア理論を日本に導入した、と誤解されている面もありますが、そんなものはもともとないのです。あるのはアメリカ小売業の現実でした。大衆消費社会を謳歌していたアメリカ小売業の現実です。シアーズやJCペニー、クローガー、セーフウェイといった大企業の存在でした。小売業なのになぜ大きな売上を上げ、株式の上場なども可能なのか、その質問の答えがチェーンストアだったのです。アメリカで100年掛かって出来たものをその半分で実現するためには、何よりも理論化が必要でした。アメリカのチェーンストアの歴史、フォーマットの盛衰、主要企業の経営、組織や陳列手法など、数々の技術が体系付けられることになりました。現在の日本の小売業があるのは、そのお陰といっていいでしょう。

 渥美先生に教わったことは、たくさんあります。ある時期には1ヵ月に2、3度も事務所にお伺いして教えを乞いました。アメリカにも連れて行って頂きました。不肖の弟子ですが、私以上に教えの時間を頂いた人間もいないかもしれません。それまで悩んでいたことがすっきり理論立てられたり、インタビューの中から新しい企画が生まれたりしました。その先生の理論の柱は、「プラグマチズム」です。実際主義、現実主義といったものですが、経験したものの中から真理を見出そうということです。前述のように、もともとアメリカの小売業を観察するところから理論化が始まっているのは、そういうところから来ているのです。

 アメリカ小売業で成功事例を奨励する一方、人類が経験したことも無い、奇抜なアイデアをことごとく否定しました。奇想天外なこと、面白可笑しいこと、一時の流行などを嫌いました。原理原則を大事にし、初めて手をつけること、不慣れなことは必ず実験や訓練をするように指導しました。アメリカ視察でも参加者に試買、試着、試食、試飲などを薦めていました。全て経験をしたことを実行するように指導していたのです。チェーンストアが、日本に産業化したのは、まさにこの指導によるものでした。

 経営コンサルティングにおいても、重要なことをたくさん教えていただきました。その中でも一番のポイントが教育の優先順位です。何をまず教えるべきか。これを間違えると、何を学んでも無駄になりますし、後々まで経営の足を引っ張ることになります。優先順位のトップは、言葉の統一です。社長の使う言葉と社員の使う言葉の意味が違っていたのでは、コミュニケーションが円滑に行きません。どんな指示をしても現場は適切に動きません。皆が同じ意味で言葉を使うようにすることが、まずは組織の原則なのです。そこで渥美先生は、「チェーンストア用語集」と言うものを作り、社員一人ひとりに持たせるように指導しました。

 コミュニケーションが円滑に行くようになったら、次は数字です。数字は誰が見ても変わりません。そこに主観の入り込む余地はありません。例えば、今日の売上は良かった、と言っても昨日と比べてか、前年に比べてか、経営者の腹積もりなのか、はたまた近くの競争相手に比べてなのか、まったく分りません。しかし、今日の売上は5万1230円、と言えば誰でも分かります。昨年より儲かった、と言っても粗利なのか税引き前利益なのか、ということは経営にとって重要なことです。売場の計数、財務の分析など皆でしっかり確認できることが必要なのです。このように原理原則をしっかりと教えていただきました。この教えをこれからも守っていくことが渥美先生のご恩に報いることになる、と改めて思っております。合掌。

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