小売業は、その国の生活を映す鏡のような存在であるが、世界のショッピングセンターや小売店の実情から、生活全般の変化を考える。
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改正薬事法の気になるポイント
 ドラッグストアの売場も大きく変わる

 6月1日から改正薬事法が施行されました。大衆マスコミでは、改正薬事法についてのさまざまな説明が行われていますが、気になることが幾つかあります。まず気になるのは、問題点ばかりがクローズアップされ、基本的なところが手薄になっていると感じられることです。幅広く、面白おかしく紹介する、というワイドショーなどでは、全てがその傾向にあるわけですが、薬事に付いては、もう少し注意深く、慎重に取り上げねばならないのではないかと思うのです。

 薬事法が改正への起点は、何と言っても日本の医療制度の見直しです。健康保険に裏打ちされた医師と患者。それに付随した薬事という医療システムの見直しです。これまで、薬は基本的には医者の診断が無ければ、手に入れることが出来ないものでした。薬剤師は、その医者を補助して、すべての医薬品について目を光らせていました。ところが、高齢化によって日本の医療費は急速に高くなり、2006年には33兆円と20年前と比較して2倍の規模に膨れ上がったということです。

 「医者が直ぐに、必要以上に薬を出す」とか、「病院の控え室は高齢者のたまり場になっている」とか、「医者に出してもらった薬が家庭に貯まっている」とか、「薬品メーカーと病院との癒着があるのでは」などさまざまな問題が指摘されるようになりました。このままでは、医療制度の破綻は、目に見えています。そこで、国は医療費削減を目指して軽度な病気は病院にかからず、自分で治療・予防する、“セルフメディケーション”の方向に医療システムを変えて行く、こととしたのです。

 実は、薬事については、すでに薬剤師の目が届かない状況になっていました。まず大衆薬の増加で、薬店が増えるに従って薬剤師の不足が目立ってきました。薬剤師を確保するために毎月10万円近くの手当てを払ったとか、一度引退した薬剤師が、押入れに眠っていた免許書を貸し出したとかいった話が聞かれるようになりました。この情態は、もはや目を光らすというようなものではありません。さらに、消費者側では、大衆薬の増加に伴って、薬剤師が不在でも別に問題は無い、といった意識が高まってきました。セルフサービスの浸透で店舗では薬剤師の必要性が良く分からなくなっていたのです。

 医薬分業によって医者と薬剤師との役割を明確にし、大衆薬の一部を医薬品から外し医薬部外品にし、そして改正薬事法へと進んでいきます。新法では、薬品を第1類、第2類、第3類の3種類に分け、第2類、第3類に関しては登録販売者という資格を有する人を置けば薬剤師がいなくても販売可能にしたのです。登録販売者さえいれば、コンビニでも、スーパーでも、家電店であっても、どの店舗でも基本的に扱えます。消費者がどこでも、何時でも医薬品を手に入れられることで、以前よりセルフメディケーションに、圧倒的に便利な環境が整って来たのです。ただし、インターネットでの販売が第3類に限られるという問題も残っています。

 第2類、第3類だけで大衆薬の90%ということですから、ほとんどの医薬品が手に入ります。医者の診断と薬剤師の補助といったこれまでの医療システムは、セルフメディケーションの方向に完全に転換したのです。改正薬事法の話は、この構造をしっかりと押さえておかなければならないと思います。問題点ばかりクローズアップしてしまうと混乱を生み、誤解を生じることにもなるのです。

 医薬品の流通は、他の分野に比べるとかなり後れています。資本の集中が遅れ、合理化が進まず、流通コストがかなりかかっています。この大きな理由としては、法の保護のもとで競争が無く、ぬくぬくと過ごしてきたことが指摘できます。ドラッグストアが増え、価格競争が起き、売上高1000億円企業が生まれてきたのは最近のことです。現在(2007年4月)3129億円のマツモトキヨシをトップに1000億円企業は9社になりました。しかし、他の分野に比較すると企業数がまだまだ多いのが実情です。

 業界が活性化されていないと、多くの場合メーカーと小売店との力の格差が生まれます。医薬品業界も同様です。大手の医薬品メーカーと零細小売企業という構造が生まれたのです。競争がないのですから、メーカーは言い値で商品を卸し、価格は下方硬直性を示します。医薬品メーカーに高収益な優良企業が多い。テレビでの宣伝やスポーツなどのスポンサーが多いと言ったことを見れば、いかにメーカーに利益が多いかが分かるというものです。さらに薬剤師に高給を払わなければならないとか、多品種小口配送の物流体制というように、大変な高コスト体制でした。そのため価格は安くならなかったのです。セルフメディケーションを実現するためには、安価な医薬品はもっとも肝腎なポイントと言えます。改正薬事法は、この実情を打破するスタートとなるでしょう。

 もう一つ指摘できるのは、零細な薬店の淘汰が進むだろうということです。“かかりつけ薬局”のように、薬剤師がいる薬局はいいのでしょうが、薬店は、大手のドラッグストアに押されていくことになるでしょう。90%を占める第2類、第3類は、売上高のほとんどを占めるものです。これを、さらに大型の品そろえの多い店舗で、さらに安価で扱かうことになるとどうしても大型の店舗にお客を取られてしまうことになります。コンビニが儲け頭であった雑誌やマンガを扱ったことで書店が経営悪化に追い込まれたように、零細薬店も苦しい状況に追い込まれることは火を見るより明らかです。
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テーマ:ビジネス - ジャンル:ビジネス

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